理事長所信

2013年度 鳥取青年会議所 第55代理事長

2013年度鳥取青年会議所 第55代理事長

生年月日 : 1974年 6月15日
事業所 : 株式会社GROW UP
役職 : 代表取締役

鳥取青年会議所における履歴

2002年 前期入会
第二政策委員会 委員
2003年 地球市民運動推進委員会 委員
(社)日本青年会議所 中国地区 鳥取ブロック協議会 会員大会実行委員会 委員
2004年 総務委員会 委員
2005年 会員交流委員会 副委員長
2006年 ふるさと活性化委員会 委員長
2007年 会員交流委員会 委員
2008年 地域経済活性化委員会 委員長
2009年 組織力向上特別委員会 委員長
因幡ビジョン特別委員会 委員
2010年 専務理事
2011年 改革実践特別委員会 委員
2012年 副理事長

はじめに

 時代は、常に変わり続ける。
 この国の発展の原動力である製造企業は、生産拠点を次々に海外へ移転し、予想出来なかった金融不安と大手企業の経営破綻が、追い討ちをかけるように日本経済をどん底へと突き落としつつある。その結果、この国は多くの雇用を失うことになり、そんな経済情勢と連動するように、社会では想像も出来ないような残酷な事件が増え続けた。様々なニュースを耳にする度に、人が人としてお互いを思いやるということを、忘れてしまったかのような風潮さえ感じる時がある。もはや、「何不自由なく、安心して暮らせる国日本」の神話は、昔の話になってしまったのだ。
 時代は常に変わり続けると言うが、それが良い方向へ変わる時と、悪い方向へ変わる時がある。悲しいが現在は、悪い方向へ変わっていると感じている人が殆どだろう。
 このような状況は、県境を越えた遠い地域で起きているのではなく、現にこの因幡地域でも当然の様に当てはまる。なぜなら、この因幡地域はこれまでの戦後の日本の発展神話を、そのまま縮図にした様なまちの構造になっているからだ。
 高度経済成長期に出てきた製造企業が、経済発展の基となり多くの雇用を支えていた。周りの様々な企業もその恩恵を受け、共に成長してきた。又、県庁所在地として、多くの公務員の雇用もあり、ある意味「競争が無い」中でしっかりと生活が守られていたのだ。まるでこの国の産業が、高度経済成長期から近年まで近隣諸国にライバルがなく、多くの税金による雇用を増やしてきた状態と同じである。そんな中で安心して暮らしていたこのまちの住民は、この劇的な時代の変化に大きな衝撃を受け、戸惑った。
 このような状況の中で住民が明るく豊かに暮らせる為に、このまちは一体何処へ向かい、何をもって差別化すれば良いのか?そんな疑問に対する答えを、私達は「環光のまち因幡」推進運動というビジョンとして掲げた。それはありふれた抽象的な運動指針ではなく、これからこのまちが目指すべき方向を、3つの具体的な政策によって達成させようとする新しい運動ビジョンである。私達は2009年度からこの運動ビジョンに沿って、すばらしい活動を展開してきたし、更に大きく発展させる為に、これまでの枠に囚われない発想を持って組織を進化させる必要がある。

 時代が変わり続ける様に、私達(社)鳥取青年会議所も、変わり続けるのだ。

3政策の取組みについて

 「環光のまち因幡」推進運動には3つの代表する政策がある。これまでの4年間は、掲げた運動ビジョンの達成の為に、この3政策を戦略の柱として活動を行ってきた。それぞれの年度で役割を持ち、継続的に行ってきた事業は、外部協力者の方々とより深い関係を築くことができ、「環境と経済が好循環するまち」という、私達が目指す志を強く発信できた。又、行政を始めとする多くの関係機関や団体に対して、(社)鳥取青年会議所の信頼感も大きくし、認知度を高めたことも間違いない。この4年間の取り組みを通して、私達は「継続は力なり」ということを自らの経験として教わったし、この活動を行う上で大きな誇りと自身を持つことが出来たと感じている。しかし成果として捉えると、この段階はまだ「階段を登り始めた」ばかりだ。なぜなら私達が手に入れたい成果とは、因幡地域が「環境と経済が好循環するまち」として機能するための、具体的な「仕組み」であるからだ。
 これまで取り組んできた活動には、常にその先を見据えた想いがあった。今までの私達の活動は、まずその想いを着実に広く地域に伝えることから、50年後の未来を作り始めようとした段階であり、大きな物事の取り組みとして当然の過程である。但し、この運動ビジョンを掲げて5年目になる2013年度は、これまでと同じ旗印を見て活動を行うわけにはいかない。これからは伝えるだけでなく、具体的な「仕組み」に繋がる取り組みが必要になる。
 因幡のグリーン政策では、因幡地域の自然環境を武器に、県外企業の誘致に繋がるような取り組みを、行政と役割分担して行う「仕組み」作りが必要となり、究極の田舎政策では、田舎暮らしの体験事業が各地域で自発的に開催され、移住希望者の生活に至るまでのサポート体制が実際に機能する「仕組み」作りが必要となる。又、新生鳥取砂丘政策では、乾燥地研究センターを含めた観光以外の魅力を早急に生み出し、その新たな魅力によって全世界から人が集まる「仕組み」を作り上げる努力が必要である。これらは私個人の考えであり、勿論別の視点からの見た取組みも可能であるが、いずれにしても、要は各政策に於いて、「環境と経済が好循環するまち」としての機能を持つ「仕組み」を、具体的に作り上げていく取り組みが必要なのだ。2013年度の政策委員会は、特にこの点に拘った活動を展開していきたい。

夢のある運動ビジョンの策定について

 政策について、「仕組み」作りに努力する必要があることを述べたが、この「仕組み」を作るには必ず何らかの「仮説」が必要になる。次年度の委員会が設置されて、最初に取り組む目標は、様々な調査・研究を重ね、この「仮説」を早く立てることだ。
 「仮説」とは、まだよくわからない事実を、合理的に説明するために、仮に立てた理論のことであり、願望でもある。「環光のまち因幡」推進運動には既に立派な「仮説」があり、これまでの4年間はその「仮説」に基づいて、それぞれの年度で目標を定め、事業を展開してきた。しかしその結果、着実にその「仮説」に近づいていると感じられる委員会もあれば、正直、そう感じることができない委員会もある。
 なぜか?答えは2つしかない。それまでの委員会の取り組みの方向が若干違っていたか、「仮説」に無理があったかのどちらかだ。これだけ壮大なビジョンに対して、4年間で成果を出すのは難しいということは充分承知である。ここで大切なのは、我々メンバーが「今の取り組みで、ビジョンの達成に繋がっている」と感じられているか?ということだ。もしそうでないのなら取り組み方を変えるか、目指す目標を変更するかのどちらかしかない。
 ビジョンとは、将来のあるべき姿を写したイメージである。2013年度は、55周年式典での発表へ向け、これまでに出てきた様々な問題をしっかりと精査し、また次の5年間が、未来の子供たちの笑顔の為に思い切った活動が出来る様に、政策をBrush-Up させる必要がある。そして、私達の掲げるビジョンが、より広く浸透し、賛同してもらえる為に、皆がワクワクして夢のあるようなビジョンを策定するのだ。だから、政策の部分も重要だが、将来のあるべき姿をカラーでイメージ出来る様なビジョンを掲げたいと思う。順番として、まずは皆が目指したいゴールを具体的に定める。そして、そのゴールに行き着くための手段や道順が政策になる。企業でも、将来の夢がビジョンであり、そこに行き着くための手段として戦略を考えるのだ。だから、もしかすると今の3政策がそれぞれ別々の柱ではなく、共通する柱として一緒になる可能性もあるし、ビジョン達成の為に、この3政策では足りないと判断すれば、新たに別の政策を必要とする場合もある。運動ビジョンについては、様々な可能性を持って議論をしたい。そして新しい運動ビジョンが策定されたら、邁進力を発揮してその達成に向い、併せてその志を、広く因幡地域に伝播させていくことを決意したい。

公益法人格取得の目的とは?

 (社)鳥取青年会議所は、2012年度内に公益法人格を取得する予定だ。これは歴史的に見ると非常に大きな変化である。書類上はこれまでの(社)鳥取青年会議所は一度解散し、これまでとは違う組織が新設される形になる。これまでと大きく変わるのが、予算の使い方だ。公益比率を維持する為に、とにかく地域の為の事業として予算を執行しなければいけない。これは、我々のまちに対するアクションが大きくなることで、地域の方々に広く認識してもらえ、私達の経験出来る領域も広がる等、色々な面で大きなチャンスと捉えることが出来る。しかし一方、行政のように予算を消化するという感覚が生まれる危険性もある。私達が行政と同じになってはいけないし、私達は私達の志を持って、真の目的に沿った事業を展開し、行政に対しても強く提言をしていく気概を忘れてはいけない。
 何の為に公益法人格を取得するのか?という議論をよく耳にするが、私なりの考えは、公益法人格は(社)鳥取青年会議所という組織の為に取得するのではなく、私達メンバー一人一人が公の人間として、仕事でも、プライベートでも世の中に対して、責任と志を持って生きていくという覚悟の証なのだ。この意味に於いて、私達は公益法人格を取得するのである。

組織を継続させる為に実行すること

 組織は継続しなければいけない。それは企業でも団体でも同じことだ。そして、組織が継続する為には、2つの重要な要素がある。一つは、組織が時代や周りの環境に併せて変わり続けるということだ。2013年度は、この青年会議所の様々な活動に於いて、今まで当たり前の様にされてきたことも、そのやり方は本当に「正しい」のか?それとも今までの「習慣」なのか?という点を吟味し、取り組み方を決める年度にしたいと考える。例えば、例年同じ様に行われる活動の理由が「習慣」であり、その「習慣」が多くのメンバーの会社や家族にとって、大きな不具合を生じている場合は、その日程や時間を変える決断をする場合もあるし、その活動そのものを行うか否かも議論するだろう。又、理事会等に於いても、日が変わっても延々と会議をすることがこの時代に於いて正しいか?と考え、会議の進め方を変える場合もある。  組織に於いて、「守るべきもの」と「変えるべきもの」とよく言うが、「守るべきもの」とは、その組織が持つ「理念」だけであって、「変えるべきもの」とは、その理念を達成するための組織のあり方や活動のやり方、全てのことである。これまでの素晴らしい先輩方に負けない位の活動を展開する為にも、メンバーが最大限の力を発揮できる、時代に合った組織環境を整えていく必要があると考える。一番大切なものを守るために、組織は変わり続けることが大切なのだ。
 組織が継続する上でもう一つの重要な要素は、大きさの維持と発展だ。「数は力也」とい言われるように、組織は大きければ大きい程周りに対する影響力も大きくなる。メンバーの成長に関しても、大きな組織で大きな活動をした方が自らの経験値も大きくできる。そうやって組織の価値が高まれば、常に一定の人数が保たれて継続され易い。そういう意味で、会員拡大はとても重要な取り組みだ。この活動に共に励む同士を集め、お互いに磨き合うことで、地域にも、家庭にも、会社にも、そしてこの組織にも、すばらしい貢献をし続けることが出来る。だから会員数100名の数字は、基準として絶対に維持する様に努めるべきだし、会員拡大こそが、まちづくりに於いても、人づくりに於いても、一番効果的であるということを忘れてはいけない。

JCをする上で、忘れてはいけないこと

 27歳でこの(社)鳥取青年会議所に入会し、早10年が経った。入会1年目は、周りのメンバーに負けたくないという思いで必死についていったが、正直、会費を払うだけで精一杯であった。しかし、背伸びをしながら、与えられた仕事を頑張ってこなしていく間に、様々な経験を通して見識が広がったと感じている。又、色々な方と出会うことで、人としても、ビジネスに於いても多くの事を教わり、チャンスも頂いた。恐らく、この(社)鳥取青年会議所がなければ、今の自分はなかっただろう。そんな私がこれまでJC活動をする過程に於いて、自分に言い聞かせてきたことは、反論をされる方もいるかも知れないが、「JCは仕事であり、社員と家族の幸せのためにする」という認識だ。
 私達はこの大不況の中、仕事の時間も家庭の時間も犠牲にして、JC活動をしている。世の為、地域の為と言うのは簡単だけれども、実際は、勤める会社と支えてくれる家庭があっての活動だ。昔の景気が良かった時代とは違い、今は会社も家庭も非常に苦しい中で、我々のJC活動を支えてくれている。だから、我々はこのことに深く感謝し、恩返しをしなければいけない。地域の為と唱える前に、まずは会社の仲間や家族の為に活動をするという意識が必要だ。「地域が良くなれば自分の周りも良くなる」と言う先の永い願望を唱えても、今は誰にも理解して貰えない。もっと貪欲に、自分の会社や家族のために、この活動をするのだという覚悟を持って取り組むべきだ。そうすることで必ず地域も良くなる。これからのJCは、この考え方を持って活動をすることが、最も大切だと感じている。
 今の時代は、時間を使う能力が非常に重要になる。仕事をする時は、社員が認める程仕事に集中し、子供や奥さんの記念日は、家族で楽しく祝う。そして、JCをする時はしっかりとJCをする。このように幾つもの違うステージを自分に与えることで、時間を有効活用する能力が高まり、物事の進め方も身に付く。又、自分の抱える仕事を部下に任せることで、会社の人材が育成されることもあるだろう。そう考えると、私達はJCをしている今の環境をチャンスと捉えて、もっと活用していく必要がある。与えられた役割から逃げずに果敢に立ち向かい、失敗を繰り返して自らが成長し、出会いを活かして会社の業績を上げる。そして家族や従業員の幸せに繋げなければいけない。これからはJCの中だけでなく、実社会の中でも認められる人間になることを目指して、JC活動に取り組む姿勢が必要である。

最後に

  私が社会人として重要だと考える能力に、「感謝力」と「挑戦意欲」がある。普段の生活が出来ることに感謝が出来ない人間は、何事に於いても成長しないし、現状に満足して様々な改革に挑戦しない人間も、決して成功できない。公益を取得した私達が、公の為にどう役立つ人間に成り、人生を充実したものに出来るかは、この組織で活動が出来ることに深く感謝し、与えられたチャンスに如何に挑戦するかにかかっている。私は入会してから多くの事を教えて頂いた先輩方や友人、後輩達への感謝の気持ちと、先輩方の「志」をしっかりと引き継ぎ、組織を正しい方向へと導く大役に挑戦する意欲を持って、2013年度(社)鳥取青年会議所の理事長に立候補させて頂いた。正直、これまでの理事長の方々とは生まれも育ちも違うし、理事長として皆さんに語る言葉も違ってくるだろう。しかし私には、創始の想いを着実に次世代へと繋げる為に、時代を見据えた思い切った決断と実行を行い、新しい「公益社団法人 鳥取青年会議所」のスタートとしてこの組織を導く役割があると、強く確信をしている。
 私が大切にする信念と、トップとして謙虚に全てを受け入れる覚悟を持って理事長職を全うし、2013年度を、全メンバーの人生の幸福に繋がる一年間にする決意であります。どうぞ宜しくお願いします。

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